今後の市政運営にあたって(令和5年)

はじめに

冒頭に、2月6日に発生したトルコシリア大地震で、5万人を超える尊い人命が失われました。犠牲者の方々へ哀悼の意を表し、心からご冥福をお祈り申し上げますとともに早期の復旧復興を重ねてお祈りいたします。阿蘇市は、市役所本庁と内牧、波野両支所に被災者救援の義援金箱を設置しています。皆様方のご協力をよろしくお願いします。

さて、令和2年1月に国内で初感染が確認された新型コロナウイルス感染症は、8度の感染拡大を繰り返しながら、医療体制のひっ迫や経済活動停滞など社会に大きな損失をもたらし、阿蘇市でも多くの陽性者が確認されました。国は5月8日から、感染法上の位置づけを、入院勧告、就業制限のある「2類」から季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げ、コロナ禍前の通常生活を取り戻す第1歩を示すことにしています。しかし一方で連日陽性者が確認されており、今なお感染拡大、不安も拭い切れないことから、引き続き、健康管理・感染対策に注力していきます。

これからも、感染症予防対策を周知徹底し、発展的創意工夫を持って、更に市民の皆様が安心して暮らしていかれるよう命と健康、生活をしっかり守る取り組みを行っていきます。

それでは、令和5年第3回阿蘇市議会定例会の開会に当たり施政方針を述べさせていただきます。

総務

総務課

個人情報保護制度は、国や地方自治体においてデジタル業務改革が強力に推進され、デジタル社会の進展、個人情報の有用性の高まりで官民枠を越えたデータ利活用が活発化になり、個人情報等の取り扱いに万全を期すため法改正が行われ、関係条例制定等を本定例会に提出いたしました。

今後は、個人情報に係る取り扱い細目を規則、要綱等で定め、個人情報保護、活用に注意し、しっかりと個人の権利利益保護に努めます。

防災情報課

阿蘇中岳第一火口は、昨年11月9日から火口見学を一部再開(Bゾーン)、週末や年末年始は多くの観光客が訪れていましたが、1月30日、火山性微動の振幅増大で、気象庁が噴火警戒レベル2の引き上げを発表、連動して阿蘇火山防災協議会は阿蘇火山防災計画に基づき、火口周辺概ね1km範囲の立入りを規制しました。

見学再開から82日間で規制となり、二次避難休憩施設、新たな見学エリアEゾーン完成間近の規制は非常に残念でありますが、関係機関と連携を図り、活動状況等を注視し、登山者、観光客、地域住民の方々の安全を第一に引き続き対応を進めていきます。

お知らせ端末機の更新事業は、令和4年度内に運用システム更新が完了、令和5年度から3ヶ年度計画で各世帯、新たな器機に更新していきます。

光ネットワーク事業は、市民間のコミュニケーション、防犯防災を含め行政情報発信、高速インターネット接続、市内企業のネットワーク等に利用されている重要な情報インフラです。今後も引き続き安定運用を行っていきます。

財政・税

企画財政課

人口減少に伴う税収減、少子高齢化に伴う社会保障経費の増大、大量更新を迎える老朽インフラの維持補修費増、防災・減災、国土強靭化の対応、時代を見据えた自治体DX推進、脱過疎に向けた地方創生、SDGs取り組みの加速化など、山積する課題に確実に対応するため、将来を見据えた足腰の強い持続可能な行財政運営が求められます。

令和5年度一般会計当初予算は、対前年度比、8.1パーセント増の約174億円規模の編成となりました。歳入は、税収入回復、ふるさと応援寄附金収入増を見込み、歳出は、人件費、公債費など義務的経費に加え、原油価格・物価高騰などの影響で物件費等が上昇、併せて老朽施設改修など投資的経費の増嵩等により、財政調整基金を6億円繰り入れての編成としています。

とりわけ、新年度は、コロナ克服と新時代開拓に向け、強い危機感と高い使命感を持って、市民の皆様の安全安心な暮らしを最優先に、低迷している地域経済回復など、TSMC関連企業の動向も注視しながら、徹底した「選択」と「集中」のもと、健全な財政運営に努めていく方針です。

税務課

令和6年度固定資産税「評価替え」に向けて、標準宅地及び路線価格見直し、新増築家屋及び滅失家屋等の把握を行い、適正な評価、課税に取り組みます。

収納率アップと納税しやすい環境整備として、令和4年4月から「コンビニ納付」や「スマホ決済」による納税が既に可能となっており、さらに令和5年4月から「固定資産税」と「軽自動車税」は「地方税共通納税システム」を利用し、スマートフォンやパソコンで納付書に印刷される「全国統一規格の二次元コード」を読み取ることで、全国の金融機関やクレジットカードでの納税が可能となります。

地籍調査事業は、波野地域の令和13年度完了を目指し、本年度は大字新波野、大字小地野、大字中江の各一部で一筆地調査を実施します。

生活

市民課

本市のマイナンバーカード申請率は、1月31日現在74.23%、交付率61.85%であり、県内市町村全体平均を上回っています。今後もマイナンバーカード出張申請受付サービスやコンビニ交付サービスなど、市民の皆様方がマイナンバーカードについて申請及び利便性を実感できる環境づくりに取り組んでいきます。

生活衛生は、家庭に余った未使用食品を集め必要としているフードバンクへの寄付活動(フードドライブ)や「食べ残しゼロ活動」推進、環境教室開催などを行い、ごみの減量及び循環型社会形成に努めていきます。

人権啓発課

人権施策は、市民一人ひとりが人権を身近な課題として認識し、様々な人権問題を正しく理解できるよう、阿蘇市人権・同和教育推進協議会活動や隣保館事業を中心に、人権啓発・教育活動に取り組みます。

また、誰もが共にいきいきと個性と能力を発揮でき、生活しやすい社会の実現に向けLGBTの方々に対するパートナーシップ宣誓制度を4月1日から導入します。

医療福祉

福祉課

子育て支援策は、保育園等で就学前から英語に慣れ親しめる機会を創出する助成事業を実施します。

また、乙姫保育園は経年による老朽箇所更新及び保育ニーズに対応するため改修を行います。

令和5年4月1日に各省庁が所管していた子どもに関する事務を集約した「こども家庭庁」がスタートします。これまで同様、関係機関連携のもと子どもたちの命を守り、安全安心な子育て環境確保を第一にハード・ソフトともに充実した施策を展開します。

障がい福祉分野は、阿蘇市障がい者計画等が令和5年度末で期間満了となることから、確かなニーズ調査等を行い、新たな計画策定に取り組みます。

ほけん課

国民健康保険事業は、団塊世代の後期高齢者医療移行により被保険者減少や一人当たりの医療費増加で、事業運営の厳しさが増すことが予想され、関係機関と連携し安定した事業運営に努めます。

介護保険事業は、令和6年度から令和8年度までを期間とする第9期事業計画を作成、より良いサービス提供と安定した事業運営となるよう努めます。

後期高齢者医療事業は、団塊世代移行の本格化に伴い、人間ドックを受診された方に助成制度を新たに実施、疾病予防、早期発見に繋げ、高齢者の健康保持増進を図っていきます。

健康増進課

新型コロナワクチン接種は、これまで同様、重症化予防に重点を置きながら、安心して接種できるよう、引き続き、接種体制整備及び周知啓発に努めます。

2月16日、熊本保健科学大学、阿蘇中央高校及び阿蘇市で高齢者の健康寿命を延ばす包括連携協定を締結、三者がそれぞれの役割のもと実践的な取り組みをし、将来を担う若者の人材育成と高齢者健康増進に繋げていきます。

保健予防事業は、生活習慣病発症及び重症化予防を目的に、丁寧な健康診断の受診継続や家庭訪問等予防的介入を行い、特に若い世代の肥満対策に力を入れ、健康アプリを活用し個人及びグループの運動習慣定着などに取り組み、全世代をとおした生活習慣病の重症化予防に努めていきます。

母子保健事業は、妊娠期から子育て期にわたり切れ目のない支援を行い、妊婦健診、乳幼児健診、個別面談などを実施し、出産子育て応援交付金の支給に合わせて、相談支援充実を図りながら、将来を担う子どもたちの育ちを支援していきます。

阿蘇医療センター

新型コロナウイルス感染症対応は、5月8日に季節性インフルエンザ等と同等「5類」へ引き下げることが決定されていますが、新たな変異株の流行も懸念されており、引き続き、阿蘇圏域唯一の第二種感染症指定医療機関として陽性患者受入れ、ワクチン接種、発熱外来診療並びに高齢者施設等の支援継続にも取り組んでいきます。

地域医療は、迫る超高齢化社会に向け在宅医療支援充実と危機発生時を含め多職種・異業種間の横断的総合連携を図っていきます。

医師をはじめ医療従事者確保については、医師招聘活動を継続し、医学部実習生、養成施設実習生等の受け入れを積極的に進め、後年、当院の就職動機に繋がるよう継続して若手医療人育成、教育機能充実に取り組みます。

これからも阿蘇市及び阿蘇医療圏の政策医療並びに中核的医療を担う拠点病院として、地域の医療需要や環境変化に適応した機能整備充実に努めていきます。

経済

農政課

全国的に農業者の方々の高齢化、担い手不足で、農地を今後維持するには農業者の方々による、作業の効率化・省力化を図ることが欠かせない状況になっており、本市にとっても同様に重要な課題です。

国の「みどりの食料システム戦略」に沿った方針を前進させるため、肥料や原油高騰の負担軽減、土壌診断での施肥計画見直し、良質な堆肥活用の土づくり、減農薬・減化学肥料の取り組みを関係機関とこれまで以上に連携し、進めていかなければなりません。

次に、現況の農地利用を地図化し、集落ごとに定めた「人・農地プラン」を令和4年2月に策定していますが、農業経営基盤強化法改正に伴い、新たに「地域計画」を策定する必要があり、本プランをベースに進めていきます。

阿蘇東部地域では、高冷地の特性を活かした農業生産基盤整備の事業化を進めるため、一日も早く大蘇ダムの安定した水利用供給が待たれます。

阿蘇谷地区は昭和40年代から大規模ほ場整備事業で整備した農業用施設の老朽化で更新基盤整備を進めていますが、今後さらに老朽化によって農業経営に支障を来たすことが予想され、より一層整備を加速化させ、計画的事業展開を行っていきます。

畜産環境対策として、施設建設後、地域住民の理解を図るため、地域臭気モニターを引き続き設置、環境に配慮し、問題発生時には厳格な対応を行っていきます。また、畜産臭気軽減施策として、行政、関係団体、畜産農家及び地域住民で組織する協議会設立を進めます。

林業は、森林環境譲与税を有効活用し、間伐等の森林整備を進め、木造公共施設等の長寿命化策や、人材育成・担い手確保、木材利用促進、普及啓発等を行っていきます。

観光課

昨年度は新型コロナウイルス感染症の影響で疲弊していた地域経済対策として、宿泊割引や夜の飲食半額キャンペーン等を実施、利用が減少した宿泊等の需要喚起に努めてきました。現在、行動制限も緩和され、観光入込客数はコロナ禍前に戻りつつあります。特に外国人旅行者宿泊数が伸びており、引き続き、国内外のニーズを捉えた誘客キャンペーンを実施、これまで開催を控えてきた既存イベントを復活させ来訪者増加に努めていきます。また10月のツール・ド・九州、12月の阿蘇神社完全復興など注目される話題を通じ阿蘇の情報発信をより強化し、TSMCの進出やアジア初の宇宙港となる大分空港など周辺地域の好機を敏感に捉え、海外の方にも満足度高い旅を提供できるよう観光地の高付加価値化推進に取り組みます。

阿蘇山上観光は、令和2年度以降、世界水準の観光地を目指し阿蘇山上一帯の上質化事業に取り組んでいます。令和4年度には仙酔峡ロープウェイ駅舎解体が完了、新見学エリア(Eゾーン)、二次避難休憩施設は火山活動活発化で工事の遅れが生じています。火口周辺規制解除後は、早期完成を目指します。

まちづくり課

新型コロナウイルスの影響から行動制限が緩和され、地域経済も少しずつ回復していますが、ウクライナ情勢を起因とする物価高騰などの影響は依然として深刻です。

昨年は、地域経済の下支えと家計負担軽減を目的としたプレミアム商品券事業などに取り組んできましたが、未だに景気回復の兆しが見えないことから、引き続き関係機関と連携し経済対策を進めます。

「ふるさと応援寄付金」は、生産者や関係事業者の協力で返礼品の品質向上や宣伝強化を図ってきました。令和5年度は、返礼品のニーズ把握に努めながら、自然体験活動や宿泊プランなど阿蘇ならではの返礼品充実と情報発信に努めていきます。

また、TSMC進出による交流人口増加や移住定住促進を図る取り組みとして、空き家バンクなどによる情報発信の強化に加え、阿蘇西部地域や阿蘇駅周辺のワークショップで市民と協働した地域づくりを進めています。

とりわけ、外国人居住者が地域コミュニティへ参加しやすい環境を整えるため、本年1月に阿蘇市多文化共生連絡協議会を設立。これまでの自然環境等の強みを活かした人口誘導策に加え、日本人と外国人が互いに暮らしやすい「多文化共生のまちづくり」を推進していきます。

平成28年の熊本地震以降、整備を進めていました阿蘇神社周辺整備事業は、一の宮インフォメーションセンター移転が完了、多目的広場や街路灯などは予定どおり年度内完成見込みです。また、本年12月予定の阿蘇神社楼門の復興にあわせて、関係団体、地元商店街等とも連携した賑わい創出に取り組みます。

インフラ

建設課

中九州横断道路は、「竹田阿蘇道路」で竹田ICと波野IC(仮称)を結ぶ全長約22.5kmが令和4年末本格的に着工しました。このうち熊本県側約5.6km区間は一部用地交渉が進められており本市としても事業推進が図られるよう地元調整に努めていきます。また、「大津熊本道路」約13.8kmも昨年度から本格的な測量・調査等に着手、現在工事中の「滝室坂道路トンネル」も令和5年度早期の本坑貫通が見込まれます。なお、既存国道57号とダブルネットワークが早期形成できるよう「北側復旧道路~大津西IC間」及び「滝室坂道路~北側復旧道路」(阿蘇市管内)の整備促進を関係自治体と共に国に要望活動を行っていきます。

阿蘇山直轄砂防事業は、本市管内で令和4年度末までに5基の堰堤が完成、計画中を含め引き続き6基が整備中にあり、土砂災害特別警戒区域の縮小で土石流に対する安全が向上します。阿蘇山直轄砂防事業促進期成会(阿蘇市・高森町・南阿蘇村)は更なる安全向上のため、国に予算確保・整備促進の要望活動を行っていきます。

市管理河川は、土砂堆積等の顕著な河川の浚渫、竹林・雑木伐採、未整備護岸は、特に集落に密着した護岸整備を行い、洪水に対する対策を講じていきます。

市管理道路は、各区要望や通学路安全対策など計画的に取り組むものや、寄せられた道路損傷等情報には迅速に対応し、円滑な維持管理に努めていきます。

住環境課

環境事業は、「ASO環境共生基金」を活用し、将来の担い手である子供たちの環境教育や自然体験学習推進をはじめ、希少野生動植物保全事業などを引き続き実施していきます。また、2050年の温室効果ガス排出実質ゼロを目標に、公共施設LED化、公用車EV車導入など、温室効果ガス削減や省エネ事業を推進し地球温暖化対策に取り組みます。

市営住宅は、「市営住宅総合基本計画」に基づき、老朽化住宅の改修など適正な維持管理で入居者の方々の住居環境維持・向上に努め、集約再編事業に取り組みます。

上下水道課

人口減少で料金収入減少や水道施設老朽化で施設更新費用増大と昨今の物価上昇等で、水道事業経営に悪影響がでています。

住民生活の根幹となる生活用水の安定的供給を将来にわたり維持するため、施設整備基本計画及び経営戦略を基に施設更新整備を行い、経営改善、経営効率化を図り、持続可能な水道事業経営安定化を目指します。

下水道事業は、令和6年度からの公営企業会計移行に向けて準備を行います。また、現在、南黒川地区管渠整備に着手しており、令和8年度完成を進めます。

教育

教育課

1月8日、これまでの成人式から名称変更した「阿蘇市二十歳を祝う集い」は、191名(本市の対象者275名)を迎えて、予定どおり開催することができました。前回から成人者自身による実行委員会の立上げ、式典進行が行われ、手作りの素晴らしい式典となりました。

コロナ禍の学校教育は、臨時休業や自宅待機期間でもタブレット端末を自宅に持ち帰り、リモートでオンライン授業を進め学びの保障に努めてきました。そのような中、日経BPが発表した公立学校情報化ランキングにおいて、阿蘇市は本年度、小中学校ともに九州1位、全国10位内(小学校全国3位、中学校全国9位)であり、ICT環境整備とともに、その活用状況が高く評価されました。更なる充実に努めていきます。

子ども達に不便をかけています阿蘇小学校体育館は、学校や学校運営協議会等と協議し、現地建て替えの方向で進めています。

これからも学校は、グローバルな将来に向けた子ども達の学びの場を創出するため、ALTや英語教育支援員等との英語会話活動も継続して取り組みます。また、市内に居住し通学する外国籍の児童生徒のため、日本語教育を兼ねた支援員を配置し、授業にスムーズに対応できる環境を構築していきます。

社会教育は、コロナ禍において生涯学習等学びの機会が減少し、十分な活動ができませんでしたが、豊かな人間性、社会性を育むため、幅広い世代に地域コミュニティ参画や実践を通じて、学びを行うことができる体制と環境づくりに引き続き取り組んでいきます。

社会体育は、昨年までコロナ禍で各種大会やイベント等が休止、中止を余儀なくされましたが、今年度は、スポーツ推進委員や火の山スポーツクラブを中心にサポート等の助力を重ね、少しずつではありますが活動の場を広げてきました。健康づくりのため、市民の方々が親しみを持ち参加しやすいスポーツ環境をこれからも提供していきます。

現在休止していますアゼリア21温水プールは、検討委員会で今後のあり方を検討されており、当委員会から答申が3月末に行われる予定です。

おわりに

これからも直面する課題に一つひとつ丁寧に向き合い、取り組み、熱意と誠意をもって輝く未来と安全安心な阿蘇市を目指してまいります。

引き続き、議員各位、市民各位のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げ、令和5年度の施政方針とします。

  • 総務部 防災情報課
  • 電話 0967-22-3232