令和8年3月施政方針

 今回の予算案は、松嶋市政として初めて編成した本格的な通年予算であります。その編成にあたりましては、あらゆる手段を講じて財源となる歳入確保に努めるとともに、その限られた財源は、徹底した選択と集中のもと、第3次総合計画に位置付ける3つの「横断的な取組」と9つの「重点施策」に優先して配分しております。

 それでは、令和8年度において展開する主要な施策の概要について、第3次総合計画に掲げる6つの基本目標に沿って、ご説明申し上げます。

産業・経済                                  

 一つ目は「産業・経済」です。

 国は、令和7年度から令和11年度を「農業構造転換集中対策期間」と位置づけ、農地の集約・大区画化やスマート農業の社会実装、共同利用施設の再編を推進します。また、水田活用の直接支払交付金を令和9年度から作物ごとの生産性向上支援へと見直す方針です。
 このため市では、JAや農業団体、地域農業再生協議会と連携し、担い手の確保や農業振興を進めるとともに、国や県の補助事業を活用してまいります。
 阿蘇中部地区広域農道では、大型車両の増加に伴う路面損傷への対応として、年次計画に基づき舗装改修を実施し、国道212号交差点では交差点改良による輸送効率化や安全対策を図ります。
 また、近年、鳥獣による被害が深刻化していることから、鳥獣被害対策事業を拡充し、有害鳥獣による被害防止策を強化します。
 林業では、森林環境譲与税を活用し、森林集約化協議会による森林整備や集約化、林道整備を進め、事故防止にも取り組んでまいります。

 国際線利用が好調な阿蘇くまもと空港では、3月末から台湾の台中直行便が運航開始予定です。また、この夏JR6社による「熊本デスティネーションキャンペーン」など、観光産業にとって好機の一年となります。そこで阿蘇市の魅力を最大限に引き出すため、体験型メニューや観光DX化を推進し、地域の活性化を図ります。主な事業として、仙酔峡駐車場の改修や広域周遊促進のプロモーションを展開します。また、夏目漱石来熊130年を記念し、小説『二百十日』に焦点を当てた展示会・ツアーを官民連携で企画し、新たな誘客を目指します。

 物価高騰対策では、地域経済の下支えと家計負担の軽減を目的とした「物価高騰対策支援商品券事業」を2月中旬から各世帯へ随時郵送にて配布しております。これにより、地域内での消費喚起と、地域経済の活性化につなげます。
 ふるさと応援寄附金は、引き続き関係部署と連携しながら、返礼品の充実、物産品のPRを図り、さらなる寄附者の獲得に努めてまいります。

 子育て・教育                                

 二つ目は「子育て・教育」です。

 子育て支援分野では、令和6年6月に「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」が成立しました。これにより、月一定時間までの利用可能枠の中で、就労要件を問わず、時間単位等で柔軟に利用できる新たな通園給付として「こども誰でも通園制度」が創設され、令和8年4月から全自治体で実施されます。本市においても公立保育園で実施します。
 特に、子育て世帯の負担軽減及び子育て支援の充実を図るため、保育料及び副食費の完全無償化に係る予算を本定例会に上程しております。
 今後も、きめ細かく切れ目のない子ども・子育て支援の充実を図ります。

 保健予防事業では、生活習慣病の予防と重症化防止を目的に、健康診断の受診勧奨や保健指導を継続し、若い世代の肥満対策や健康アプリを活用した運動習慣の定着を進めます。令和8年度からは、歯周病検診を開始し、全世代の健康づくりに努めます。
 母子保健事業では、子育て環境の整備や医療相談アプリなども活用しながら相談事業の充実を図り、妊婦や子育て家庭への支援を強化します。
 予防接種事業では、ワクチン種類の増加に対応し、安全な接種環境を整備し、周知や医療機関との連携を強化します。

 AI技術の進展やデジタル化の加速により、教育分野では基礎学力向上に加え、ICTや情報モラル教育を充実させ、子どもたちが激しく変化する社会で主体的に活躍できる力を養うことが求められています。また、多様性を尊重するインクルーシブ教育を推進し、思いやりや他者理解を育む環境を整備します。
 特に、給食費の無償化につきましては、全国一律で公立小学校を対象に実施される中、本市では市立小・中学校すべての給食費を無償化し、子育て世帯の負担軽減と子どもたちの未来を支援してまいります。さらに、生涯学習や多世代交流を促進し、地域全体で学びを支え合う仕組みを構築します。
 社会体育では、心身の健康を支える場として、誰もが安心して利用できる施設を整備してまいります。
 これらを通じて、地域全体で教育の可能性を広げ、持続可能な社会の実現を目指します。

 健康・医療・保健                             

 三つ目は「健康・医療・保健」です。

 人権施策では、市民一人ひとりが人権を身近な課題として捉え、偏見や差別の解消に向けた取組を進めるため、阿蘇市人権・同和教育推進協議会の活動や隣保館事業を中心に、人権啓発・教育の充実を図ります。
 老朽化が進む市隣保館「カルデラASO」は、熊本県隣保館施設整備費補助金を活用し、長寿命化改修を実施します。これにより、福祉と人権のまちづくりの拠点としての機能を強化し、住民福祉の向上と施設利用の促進に努めます。

 障がい福祉分野では、「第7期阿蘇市障がい福祉計画」及び「第3期阿蘇市障がい児福祉計画」が令和8年度末で期間満了となることから、より詳細な障がい福祉サービスの必要見込み量を算出するためのニーズ調査等を行い、基盤整備の着実な推進に向け、新たな計画策定に取り組みます。
 社会経済情勢に伴う相談件数の増加や相談内容の多様化・複雑化に対応するため関係機関と連携し、生活困窮者対策、消費生活相談及び生活保護制度等により、きめ細かな支援が可能となるよう、相談支援体制の更なる充実・強化を図り、適切な支援に努めます。

 国民健康保険事業では、熊本県運営方針及び市事業計画に基づき、特定健診の受診率向上を通じて健康維持と医療費抑制に努めます。
 介護保険事業では、第10期事業計画を作成し、地域のニーズを踏まえたサービス提供を目指します。
 後期高齢者医療保険事業では、健診や人間ドックの受診環境を整え、疾病予防や早期発見を推進し、高齢者の健康増進と医療費抑制に取り組みます。これらを通じて、安心して暮らせるまちづくりを目指します。

 阿蘇医療センターでは、不採算医療を担いながらも経営改善プロジェクトを進め、病床利用率向上や支出削減、診療報酬算定増、在宅医療支援などの改善策を実施しています。
 令和8年度診療報酬改定では、12年ぶりのプラス改定が予定されており、国の支援策や地域包括ケアの推進に対応しながら健全経営を目指しています。
 医療従事者の確保では、熊本大学病院などとの連携や外国人技能者の雇用、AIやRPAを活用した業務効率化を進めています。また、研修医や実習生の受け入れを通じて若手医療人の育成を図り、地域の医療需要に対応した機能充実に努めています。
 今後も地域医療の中核的役割を果たす拠点病院としての機能強化を進めてまいります。

 インフラ整備・防災                            

 四つ目は「インフラ整備・防災」です。

 中九州横断道路の「滝室坂道路」が令和8年度に開通予定であり、災害時に強い道路として地域経済や観光・物流の発展に寄与することが期待されています。さらに、「竹田阿蘇道路」「大津道路」「大津熊本道路」の整備促進や「滝室坂~北側復旧道路間」の計画段階評価への早期着手を関係機関に要望してまいります。また、阿蘇山直轄砂防事業の予算確保・整備促進を国に求め、安全性向上を図ります。
 市管理道路では、老朽化した道路の整備や異常情報への迅速対応を進め、安全確保に努めます。
 市管理河川では、土砂浚渫や支障木伐採を出水期前に計画的に実施します。

 昨年度から整備中の「坊中南団地」が竣工し、4月からの供用開始に向け、現在、入居手続きを進めています。
 また、「市営住宅総合基本計画」に基づき、老朽化した住宅の改修・改良・解体を進めるとともに、将来を見据えた総合的な管理運営に取り組みます。

 水道事業では、安全な水道水の持続的供給のため水質管理や施設維持管理を継続し、老朽化した施設の更新や災害時に重要な管路の保守整備を進めます。
 公共下水道事業では、令和8年度を最終年度とする整備計画の見直しや未普及地区の整備方針の検討、南黒川地区の管渠整備、浄化センターの更新を計画的に進めます。
 また、令和7年中に見直した経営戦略を基礎とし、人口減少や物価高騰による収益減少や維持管理費増加を見据えた上下水道料金の適正化を検討します。

 今年は熊本地震から10年の節目の年です。この間、地域の安全と安心を取り戻すための復旧・復興が続けられてきました。自然災害の脅威に備えるためには、防災対策の強化と市民一人ひとりの「自助」や「共助」の意識が重要です。来年度は、地区防災組織や防災士連絡協議会が連携し、地域特性に応じた防災計画の策定を推進します。また、防災士養成講座を継続し、地域防災のリーダーを育成することで防災力を向上させます。
 さらに9月には、熊本県消防操法大会が本市で開催されます。市としましても、消防団員の技術向上や士気の高揚を図る機会として協力してまいります。

 環境・自然                                 

 五つ目は「環境・自然」です。

 環境分野では、ASO環境共生基金を活用し、阿蘇地域の地下水資源調査、生物多様性の保全、景観維持などの事業を推進し、自然環境保全の取り組みを継続します。
 また、阿蘇地域の水循環が熊本地域の水源涵養に大きく寄与していることを明らかにするための取り組みを進め、水循環の保全が極めて重要であることを関係機関と連携して広く発信してまいります。

 移住定住支援センターでは、相談者件数や空き家バンク登録数が増加しており、地域おこし協力隊を1名増員して移住者の増加を目指しています。
 また、外国人居住者の増加に対応し、地域日本語教室「にほんごあそびば」を継続開催し、多文化共生のまちづくりを推進します。
 さらに、市内5地域で組織された「阿蘇の未来を語る会」は、地域の未来像などの話し合いを定期的に開催し、提案書を来年度までにまとめる予定です。

 環境衛生では、住民が快適で衛生的な生活を送れる環境を整備するため、新たにごみ集積所の整備費用に対する補助制度を設けます。
 また、これまで回収の対象外であったモバイルバッテリーやリチウムイオン電池は、拠点回収を開始するなど、環境改善に向けた具体的な取り組みを推進します。

 行政運営                                 

 六つ目は「行政運営」です。

 令和8年度から2年をかけて組織機構の見直しを行い、第1弾として企画業務を集約した「企画政策部」を新設します。この部では歳入増加の取り組みや自治体DX推進を強化し、全庁的かつ戦略的な施策を展開します。
 令和9年度には、住民福祉やサービス向上を目指した組織の見直しを進める予定です。また、人材育成と確保に努め、広報公聴では市公式ホームページのリニューアルやSNS活用を通じて情報提供を充実させ、市民の意見を市政運営に反映させる取り組みを進めます。

 窓口のDX化においてキャッシュレス決済対応のセミセルフレジを導入し、来庁者の利便性向上を目指します。
 マイナンバーカードは、令和8年以降に切替申請の増加が予想されるため、早めの申請を促します。また、電子入札システムを導入し、事業者の負担軽減や入札の公平性・透明性向上に努めます。

 令和8年度の市税歳入は約31億9千万円で、前年度より約1億円増収が見込まれています。個人市民税、固定資産税、入湯税は、増収が予測される一方、法人市民税は減収となる見込みです。軽自動車税の環境性能割は、令和8年3月末で廃止されます。
 固定資産税の評価替えに向けて適切な評価を進め、国民健康保険税では、少子化対策や子育て支援を目的とした「子ども・子育て支援納付金」が新設されます。
 収税では、税負担の公平性と歳入の安定を目指し、納付環境の整備を進めます。また、滞納整理では、関係機関と連携し、公平な税負担と安心して納付できる環境を整備します。
 地籍調査は、波野地域の約59%の登記が完了し、令和16年度の完了を目指します。

 結びに                             

 以上、令和8年度の市政運営に臨む基本方針と主要な施策の概要をご説明いたしました。
 とりわけ、令和8年度は、市立小・中学校の給食費、市内保育所と認定こども園の保育料・副食費の完全無償化や1か月児健診、RSウイルスワクチン、妊産婦への交通費の助成事業など、強力な子育て支援に臨んでいます。
 私は、第3次総合計画の中で、「大自然とともに ワクワクする 未来へ」という将来都市像を掲げました。
 子どもたちが夢を語り、その成長を見守る家族の笑顔、誰もが幸せに安心して暮らせるまち、そんなワクワク、心が躍るような未来を、皆様と共に築いていきたいと心から願っております。

 最後になりますが、市民の皆様におかれましては、これらの諸施策に対しまして、より一層のご理解とご協力を賜りますよう心からお願い申し上げ、令和8年度の施政方針といたします。

  • 総務部 総務課
  • 電話 0967-22-3111