阿蘇市東部に所在する「佐伯家住宅主屋(おもや)」ほか4件が、阿蘇市では初の国登録有形文化財となりました。
佐伯家は、江戸時代には庄屋をつとめた旧家で、当時の地方役人の職を務めてきました。明治10(1877)年の西南の役の際に放火され、全焼しました。今回登録となった物件は、いずれもそれ以降に再建されたものです。
門及び塀(へい)をのぞく主屋、蔵、味噌蔵(みそぐら)、長屋門(ながやもん)の4軒は、平成28(2016)年熊本地震で被災しましたが、民間からの寄附金を財源とした「平成28年熊本地震被災文化財等復旧復興基金」を活用して、歴史的価値を損なわない工法により修復されました。
(1)佐伯家住宅主屋

主屋は、明治13(1880)年築の二階建(一部三階建)で、西半分が漆喰(しっくい)を塗り込まれた土蔵造り、庭に面する東半分は伝統的な書院造りという特殊な外観です。間取りは農家建築の典型的な形で、座敷の欄間(らんま)や天袋(床の間の天井側の物入れ)の絵などに高い意匠性が見られ、当時の主人の価値観を反映されています。棟札が残っており、明治13年の建築年代とともに、棟梁(とうりょう)は大分県の大工であることがわかります。

蔵は、主屋の南西に建つ米蔵で、二階建の大型の土蔵になっています。明治時代前期に米蔵として建てられ、改変はあるものの主要部分は当時の造りが残っています。地域の豪農の屋敷構えを伝える貴重な建物です。

味噌蔵は、主屋の西面に建つ蔵で、北室は味噌・醤油(しょうゆ)蔵、南室は窯(かま)を設けた味噌つくりの作業場で、機能的な間取りとなっています。明治時代前期の建築と推定され、現在も味噌つくり等の作業加工場として使われています。地域の豪農の屋敷構えを構成する建物であり、当時の味噌つくりの様子がうかがえる貴重な建物です。

長屋門は、東端を門口とし、それ以外を厩(うまや)や肥料小屋、納屋などにあてる長屋つくりの門で、旧家の表構えにふさわしい長大な門になっています。主屋と同じ明治13年築と伝えられています。現在、長屋門を配する屋敷は減っており、地域の豪農の屋敷構えを伝える貴重な建物です。

所有者提供
門及び塀は、主屋玄関前と庭を仕切る形で設けられ、門は上部の欄間に透(す)かしの彫刻があります。主屋と同じ明治13年築と伝聞されています。竹垣風の趣向性のある繊細な意匠が良好な状態で残っていることが評価されました。
区分:国登録有形文化財(建造物)
指定年月日:令和8(2026)年2月10日
