今後の市政運営にあたって(令和6年度)

はじめに

能登半島地震発生から1か月半が経過、被災地は災害支援住宅の整備、生活道の復旧は進んでいるものの、未だ一万人を超える人達が避難所で不自由な生活を過ごされており、本格的な災害復旧はまだまだこれからです。本市は、これまで市職員3人を派遣、災害支援業務に従事していますが、引き続き被災地の派遣を行っていきます。

さて、コロナ禍から社会経済活動の正常化が進みつつある中、国際情勢の変化等による物価高騰は、今なお経済や市民生活に大きな影響を与えています。

また、急速な人口減少、少子高齢化の進展等で地域活力の低下、産業の担い手不足、経済の縮小、地域コミュニティの維持困難など、様々な問題に直面することが危惧され、脱過疎に向けた地方創生、SDGs取り組みの加速化、時代を見据えた自治体DXの推進、防災・減災、国土強靭化対応など、山積する課題に確実に取り組むためには、足腰の強い持続可能な行財政運営が求められています。

これまで本市は、平成 29 年9月にまちづくりの基本指針「第2次総合計画」を策定、「人がつながり創りだす新しい阿蘇~ONLY ONEの世界へ~」を将来都市像とし、熊本地震からの早期復旧復興を重点テーマに、各種事業に取り組んできました。来年度は、その計画期間が満了になることから、あらゆる課題に向き合い、復興から発展へ、またコロナ脱却と新時代開拓に向け、魅力あふれる新しい阿蘇市を創造・発信し、次世代へつなげていくため、次のステージとなる将来ビジョン「第3次総合計画」策定に取り組みます。

また、国は地方創生に係る総合戦略を「デジタル田園都市国家構想総合戦略」に改訂、これを受けデジタル技術等を活用した新たな「総合戦略」と「人口ビジョン」を併せて策定します。

それでは、令和6年第2回阿蘇市議会定例会開会にあたり施政方針を述べさせていただきます。

総務

総務課

少子高齢化社会、価値観の多様化、大規模災害・感染症など新たなリスクの顕在化、デジタル化の進展など、本市を取り巻く状況が大きく変化している中、複雑・多様化する行政課題に対応するとき、地方自治体にとってマンパワーの重要性は以前にも増しており、こうした現実を踏まえ、「阿蘇市人材育成基本方針」を改め、時代変化や行政課題に対応できる人材育成・確保に取り組みます。

個人情報は、内閣府所管「個人情報保護委員会の監視下」におかれ、適正な取扱いが求められることとなりました。本年4月施行する安全管理措置要綱及び個人情報保護運用マニュアルを基に、厳格かつ適切な個人情報保護、活用に努めていきます。

SNS時代に対応する行政情報発信として市公式LINEの運用で、市民ニーズに応じた情報配信と行政手続の活用を図り、自治体DX推進に努めます。

防災情報課

阿蘇中岳第一火口は1月23日、火山ガス放出量増大、山体膨張を示す地殻変動観測で、噴火警戒レベル2に引き上げられ、阿蘇火山防災会議協議会は、阿蘇火山防災計画に基づき、火口周辺概ね1km立入りを制限する一次規制を実施中です。今後も引き続き関係機関と連携し、登山客、観光客、地域住民の方々の安全を第一に、突発的状況変化に常時対応できるよう火山活動状況をしっかりと注視していきます。

地震のようにいつ起こるか分からない災害から市民の命を守るには、市の防災対策強化はもとより、市民一人ひとりが「自助」(自分、家族)、「共助」(隣近所、地域)を意識し、日頃から備えることが重要です。

このため、令和6年度から防災・危機管理の専門的知識と災害対応など豊富な経験をもつ「危機管理監」を採用し、災害など緊急事態発生時の状況判断、対応策立案や庁内防災体制強化、地域防災力向上を図ります。

また、市内に居住または勤務する防災士を対象に「阿蘇市防災士連絡協議会」を組織し、危機管理監と連携しながら、市民各位の防災意識高揚、自主防災組織の防災力向上に努めます。

お知らせ端末機更新事業は、昨年12月から阿蘇、一の宮、波野の各地区で一斉に各家庭の端末機交換を開始、令和7年度完了に向け順次進めていきます。

財政・税

企画財政課

令和6年度一般会計当初予算は、喫緊課題である老朽施設等の更新・長寿命化を計画的かつ重点的に進め、市内全中学校屋内運動場に空調設備を導入するなど、施設機能強化と利便性向上の投資的経費を拡充、併せて、原油価格・物価高騰などの影響で物件費等の増加も考慮し、約183億円規模の予算編成としました。

今後も、市民各位の安全安心な暮らしの実現を最優先に、TSMC関連企業の動向も注視しながら、地域経済の波及効果につながるよう、事業効果最大化を図り、予算の重点化と行政スリム化で、健全な財政運営に努めていきます。

「アゼリア21」は、昨年3月に検討委員会からの答申を受け、現在、教育課など関係課で今後の在り方を協議、企業・団体へアプローチを含め検討しています。

税務課

令和6年度は固定資産税「評価替え」の年にあたります。「評価替え」に向け、地目変更や家屋新築、滅失等の把握を行い、課税漏れや課税誤りがないよう、公平かつ適正な課税に努めます。

市民税は、令和6年度から個人住民税均等割と併せて「森林環境税」の「1人年額1,000円」を徴収することになりますが、「所得税3万円と住民税1万円、計4万円」の「定額減税」も実施されます。このような新たな制度について、市民の方々の混乱を招かないよう丁寧な制度周知・啓発に努めます。

収税は、税負担の公平性を確保するため、積極的に滞納整理を行い、納付環境整備と滞納額圧縮及び収納率向上に努めます。

地籍調査事業は、波野地域の令和13年度登記完了に向け、令和6年度は「大字波野、大字新波野」各一部の「一筆地調査」を実施します。

生活

市民課

マイナンバーカード普及やコンビニ交付サービスの各種証明書発行手数料減額に伴い、令和5年度コンビニ交付サービス利用件数は、一昨年より約2倍増加となっています。引き続き、窓口サービス充実を含めマイナンバーカード利便性を実感する環境づくりに取り組んでいきます。

生活衛生は、家庭で余った食品をフードバンクなどに寄付し、必要とする家庭に届ける「フードドライブ」の取り組みや環境教室開催を通して、市民各位の環境保全意識を醸成し、ごみ減量及び循環型社会形成に努めます。

人権啓発課

人権施策は、市民一人ひとりが人権を身近な課題と認識し、偏見や差別解消の取り組み等を進め、様々な人権問題を正しく理解できるよう、阿蘇市人権・同和教育推進協議会活動や隣保館事業を中心に、人権啓発・教育活動を進めます。

男女共同参画推進は、男女が共に支え合い、それぞれの個性と能力を充分に発揮できる地域社会の実現を目指します。また、性の多様性への理解促進と個性を認め合う生活しやすい社会実現に向け制定したパートナーシップ宣誓制度について、県内導入自治体と相互連携を進めていきます。

医療福祉

福祉課

子育て支援は、令和6年度に令和7年度からの5年間計画「市町村こども計画」を策定し、子どもたちが健やかに育つ環境整備を進めます。

乙姫保育園大規模改修工事は、子どもたちの安全安心な保育施設として、令和6年度中の竣工に向け改修を行っています。

令和5年度開始した「英語ふれあい事業」は、子どもたちが楽しんで英語を使って遊ぶ姿が各所に見られ、更なる可能性が広がる効果ある事業として継続していきます。

地域福祉は、高齢者、障がい者、児童、その他福祉施策の基本となる「第3次地域福祉計画」期間が令和6年度末で満了となることから、アンケート調査等の課題抽出を行い、関係機関、団体と連携・協働し、実効性ある新たな計画策定に取り組みます。

また、複雑・多様化する市民各位の相談に対し関係機関と連携し、生活困窮者対策・消費生活相談あるいは生活保護制度等で、きめ細かな相談支援体制充実・強化を図り、的確な支援に努めます。

ほけん課

国民健康保険事業は、「熊本県国民健康保険運営方針」及び「令和6年度阿蘇市国民健康保険事業計画」を基に、県と連携し安定した事業運営に努めます。また、特定健診の受診率を向上させ、被保険者の健康保持増進に向けた保健事業や医療費適正化事業に取り組みます。

後期高齢者医療事業は、急速な高齢化進展で、更なる医療費増加が予想されるため、引き続き健診や人間ドックを受診しやすい環境づくりに努め、生活習慣病発症と重症化を予防し、高齢者の方々の健康寿命延伸及び医療費抑制を図ります。

介護保険事業は、「第9期阿蘇市高齢者いきいきプラン」に基づき、一人ひとりが主体的に参加し、自助・互助・共助の仕組みを確立し、より良いサービス提供と安定した事業運営に努めます。

今後も、それぞれの事業を通して関係機関と連携し、誰もが住み慣れた地域で生きがいや希望をもって暮らすことができる福祉充実に取り組みます。

健康増進課

保健予防事業は、市民各位の健康を守る保健事業施策「健康増進計画及び食育推進計画(第3次)」に基づき、生活習慣病予防に向けた食事・運動習慣の改善、さらに、こころの健康維持・向上を目的に、健康診断や継続した保健指導、健康アプリ活用等を通して、予防・健康づくり推進を図り、健康寿命延伸に努めます。

母子保健事業は、安心して子育てできる環境づくりを目指し、これまで以上に関係機関と連携、相談事業や妊婦の方及び子育て家庭への切れ目ない支援、協力体制充実を図り、未来を担う子どもたちの成長を支えていきます。

新型コロナワクチン全額公費負担は、令和6年3月に終了しますが、新型コロナウイルス感染症の重症化予防を目的に、引き続き市民各位が安心して接種できる、円滑な接種体制整備に努めます。

阿蘇医療センター

阿蘇医療センターは、現在も新型コロナウイルス感染症入院患者を受け入れており、これまでに蓄積した経験・知見を基に、阿蘇圏域唯一の第二種感染症指定医療機関として更に機能強化を図り、その使命を果たしていきます。

国が進める地域医療構想で令和5年9月に阿蘇構想区域が重点支援区域に選定されました。今後県を交え、小国公立病院・阿蘇医療センターで機能再編等、具体的内容を調整していきます。

医療従事者確保は、医師招聘活動が実り、令和6年4月から新たに4名の常勤医師が着任する予定です。また、研修医・実習生等の受入れは、後年の当院への就職動機づけになり、人材確保に資することから、受入れを継続、若手医療人材の育成、教育機能充実に取り組みます。

診療報酬は、令和6年6月の診療報酬改定にあわせ、入院医療分は従来の医療行為を積み上げる「出来高算定方式」から、病名と症状等に応じて医療費を計算する「DPC(診療報酬包括評価制度)算定方式」へ移行します。患者様へ説明等十分に行いながら移行作業を進め、診療報酬の適正確保に努めます。

阿蘇医療センターは、今年8月に平成26年の開院から10年を迎えます。これからも阿蘇市及び阿蘇医療圏の政策医療並びに中核的医療を担う拠点病院として、地域医療需要や環境変化に適応した機能整備充実に努めていきます。

経済

農政課

全国的に農業従事者減少、高齢化が進む中、農地を守り、農業経営を維持発展させていくため、地域の担い手確保は、本市農業の大きな課題です。

将来の地域農業を担う中心経営体育成に向け、農地集積や集約化の経営規模拡大、生産力向上等で経営基盤強化を図り、国の「みどり食料システム戦略」に沿った持続可能な農業実現に取り組みます。

また、担い手に関する方針を集落ごとに定めた「人・農地プラン」に基づき、地域農業の在り方や農地利用の姿を明確化した「地域計画」策定を農業従事者の方々と話し合いを行いながら進めます。

阿蘇東部地域は、農業生産を支える基盤整備等の事業化に向け、基礎調査が完了した地区から、国への事業申請に向けた事業計画を策定し、早期着工を目指します。また、大蘇ダム農業用水を利用した新たな営農体系を確立し、高付加価値農業実現に取り組みます。

森林は、地球温暖化防止、国土保全、水源涵養等、国民に広く恩恵をもたらしています。この森林の適切な整備を行うべく、令和6年度から森林整備促進を目的とした「森林環境税」の課税が始まります。この財源を活用し、林業従事者育成・担い手確保と併せ木材利用促進、普及啓発等を進めます。

観光課

楼門が完成した阿蘇神社の正月三が日の参拝者数は、過去最高の約15万人に達しました。また、本年はTSMC熊本工場がいよいよ稼働します。円安状況も継続しており、外国人観光客増加施策は、数より質の向上を目指し、従業員不足も念頭に、利便性と満足度高い旅の提供のため、観光DXや多言語対応、民間施設も含めた観光素材の魅力発信を一層強化し、確実な利益向上に努めます。

本年12月阿蘇くじゅう国立公園は90周年を迎えます。関連ハード事業等、平成28年から進めている国立公園満喫プロジェクト事業の成果を世界中へ発信する機会とし、各種イベント等に取り組みます。また継続して、アクティビティ拠点化、新たなスポットづくり、九州主要観光地と連携で富裕層受入れ等を進め、国際的な知名度をさらに高めていきます。併せて波野荻岳山頂送水施設整備を行うなど、市内の魅力ある地域スポット磨き上げ・PRにも注力し周遊化を図ります。

まちづくり課

賃上げが物価上昇に追い付いていない状況にある中、エネルギー・食料品価格等、物価高騰の影響は依然として続いています。地域経済の下支えと家計負担軽減を目的としたプレミアム商品券事業を、物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用して年度当初から取り組みます。

本市「ふるさと応援寄付金」は、昨年10月から制度改正対応に加え、人気返礼品確保や店舗型ふるさと納税「ふるさとズ」の利用拡大など魅力ある返礼品開発、発信を行ってきました。令和6年度は、より多くの方に阿蘇市を応援していただける取り組みを事業者自らが連携、発信する協議会設立に向け支援していきます。

阿蘇市まち・ひと・しごと創生総合戦略に基づき、移住支援事業・マッチング支援事業及び起業支援事業を総合的に行う拠点として、本年10月に移住定住支援センター設置を計画しています。地域おこし協力隊制度を活用し、市内の移住・定住促進及び中小企業等の人手不足解消に努めます。

外国人居住者が地域コミュニティへ参加しやすい環境を整えるため「やさしい日本語教室」や「台湾との交流事業」を実施してきましたが、引き続き日本人と外国人が互いに暮らしやすい「多文化共生のまちづくり」を推進していきます。

企業誘致は、サテライトオフィス事業によりIT関連事業者誘致を行い、10社進出が決定しました。今後も、民間施設や遊休市有地への誘致活動に取り組みます。

インフラ

建設課

中九州横断道路は、熊本管内で整備中の「竹田阿蘇道路」、「滝室坂道路」、「大津熊本道路」整備促進に加え「大津~大津西間」早期事業化と阿蘇市管内「滝室坂~北側復旧道路間」の計画段階評価への早期着手を関係機関に強く要望していきます。

阿蘇山直轄砂防事業は、管内整備10箇所中6箇所で整備完了、引き続き4箇所整備が進められ、その内旧熊本市あそ教育キャンプ場(南宮原地区)に整備される湯浦川5砂防堰堤工事は令和5年度工事用道路等用地買収に着手、今後本格的整備が進められる予定です。

市管理河川は、土砂堆積等の著しい河川の浚渫、河川改修は住宅隣接地の護岸整備を行うなど防災対策を進めます。

市管理道路は、1月に上西黒川成川線(農村公園あぴか南側1.1km)道路舗装整備が完了、引き続き幹線道路舗装改修に取り組みます。また、道路破損等情報は迅速に対応し安全確保に努めます。

住環境課

市営住宅は、黒川地区坊中南団地(1棟13戸)建設に着手し、社会のセーフティネットとして役割を果たしながら居住環境改善を図ります。

環境事業は、「ASO環境共生基金」を活用し、子どもたちの環境教育・自然体験学習に継続して取り組みます。

また、阿蘇の草原は、景観維持や多様性動植物の保全、更に「九州の水がめ」として水源涵養機能が優れている重要性を県内外に発信していきます。

上下水道課

水道事業は、人口減少で料金収入減少や、施設等の老朽化で更新費用増大、加えて昨今の物価上昇などで、様々な課題を抱えています。

安全で安心な生活用水を安定的に供給するため、施設整備基本計画及び経営戦略を基に施設更新整備を行うとともに、公営企業会計の利点を活かしながら経営改善、経営効率化を進め、水道事業健全経営を目指します。

下水道事業は、令和6年度から公営企業会計に移行します。新たな会計制度のもと、経営状況を的確に把握し、持続可能な下水道機能確保とコスト低減に努め、経営安定化に取り組みます。また、下水道未普及地区南黒川地区で管渠整備を継続して進めていきます。

教育

教育課

学校施設は、阿蘇小学校屋内運動場解体が12月末完了、改築に係る本契約も締結し令和7年1月末完成を目指しています。また、老朽化した波野中学校屋内運動場改修工事、併せて近年の異常気象による熱中症予防のため、市内全中学校屋内運動場に空調設備を導入します。

学校教育は、平成30年から導入した情報端末(タブレット端末)を年次計画で更新、臨時休業や自宅待機期間でもタブレット端末を自宅に持ち帰り、リモートでオンライン授業を進めるなど、学びの保障の更なる充実に努めます。

本市の子どもたちが、持続可能な社会の創り手として、これからの未来社会を切り拓いていく必要な課題探究能力や情報活用能力、表現力を育むためにSⅮGsを通した学びにより「誰一人取り残さない学校」づくりを目指します。

おわりに

市民の皆様方の命と健康、暮らしをしっかりと守りながら、アフターコロナ、災害復旧・復興後のまちづくりに発展的創意工夫とチャレンジ精神を持って取り組んでいきます。

引き続き、議員各位、市民各位のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げ、令和6年度施政方針とします。

  • 総務部 防災情報課
  • 電話 0967-22-3232